”我酔欲眠卿且去”ー我酔うて眠らんと欲す、君しばらく去れ。

 これは私の気になる一句です。
 酒に酔って眠気がさしてきたので、君は帰りなさい 、と言う句ですが、これは二人で酒を飲んでいるときの関係に限らず、こんな事を自在に言える友人がいることは、なんと素晴らしいでしょう。「君は去れ」と言われて、気分を害さずにスーッと消える友達、そんな人と、こういう酒飲みをしてみたいと思います。
 次の句は ”明朝有意抱琴来”ー明朝意があったら琴を抱いて来てくれ。
と言う句です。明朝その気になったらまた琴を抱いてきて下さい、と言う事ですが、また酒を飲みましょう、と言う事ですね。何とも自在な心境です。
 私は酒は一向に飲めなかったのですが、何がそうさせたのでしょうか、今は結構飲むようになりました。昔を知る友人にはびっくりされますが、相当飲めるようになったと自分でも思います。酒に強いと言う表現は違いますが、飲めるようになったという事です。
 酔うほどに大声を張り上げてしゃべっていますが、ふっと先の句が頭をよぎるときがあります。何もしゃべらず、一杯、一杯、また一杯、と静かに杯を重ねて穏やかな酒飲みも、有るのでは?と思いつつ、声を張り上げる自分が滑稽です。
どうでしょう、こんな感じで二人で酒を飲む、”両人対酌して山花開く”、絵になる光景ですね。
 この詩は、詩仙・李白の詩です。「山中にて幽人と対酌す」と題するように、自分の分身とか、あるいは李白より330年ほど前「無弦の琴」の詩人、酒豪として知られた陶淵明を重ねて詠んだと言う事です。こんな酔境を、経験する幸せが私の人生にあれば、幸せなことです。でも、仙人の世界ですから、俗世のしがらみの中にいては、無理な願いでしょうか。

(山中與幽人対酌)      (山中にて幽人と対酌す)

 両人対酌山花開         両人対酌して 山花開く
 一杯一杯復一杯         一杯一杯 また一杯
 我酔欲眠卿且去         我 酔うて眠らんと欲す きみ しばらく去れ
 明朝有意抱琴来         明朝 意有らば 琴を抱きて来たれ
たかやす進一